Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
キャリアウーマン然とした清楚な落ち着きをかなぐり捨て、ぶるんぶるんと大きく首をふる彼女。
なんか、さっきまでと随分イメージ違う……って、え、付き合って、ない?
いやいや、そんなはずないでしょう。
「だって私、見ましたよ。あなたが車の中でクロードさんとキスするところ」
「えぇええ? わたしがキングとキスぅ!? するわけないわ、あなたの見間違いよ!」
ばっさり力強く言い切られて、今度は私の方がたじろぐ。
み、見間違い?
そりゃ、遠目で夜だったし、顔が重なったように見えただけ、ではあるけれど……
「だってバレンタインの夜も、一緒にシェルリーズに泊まったんじゃ……」
「あぁあれは……そういうことじゃないの。この前はホテル内で仕事があっただけ。キングはシェルリーズがお気に入りだから、会議用に部屋を押さえることはよくあるのよ」
ホテル内で、仕事? 会議?
え、ほんとに……って、……ん?
キング?
そういえば、さっきのSPさんもキング、って言ってたような……
「あの、キングって、誰ですか? どなたか別の方のこと言ってます?」
首を傾げる私に、高橋さんは「あぁ、ごめんなさい」と破顔した。
「ただの仲間内のあだ名、かな? クセで呼んじゃうのよね。クロードのことで間違いないわ。あいつ、オレ様だし強引だし、態度がデカいでしょ」
王者の風格がある、みたいな理由かと思えば、態度がデカい? ……そうかな??
「オレ様で強引……は、そうかもですけど、いつも優しい、ですよ?」
なんとなく反発を覚えて言い返したら、「えぇえ?」と世にも珍しいものを見た、っていう目で眺められた。
「……ま、そうかもしれないわね。あなたには」
含みのある言い方や生ぬるい視線は気になったものの、まぁいいや、とりあえず今は置いておこう。
じゃあ、やっぱり彼女とクロードさんは、何の関係もないってこと……?
思うそばから無意識に弾んでしまう鼓動を、必死で宥めた。
何があったって、離婚という未来が変わるわけじゃないんだから――