Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ハッと大きく息を吸う音が、ここまで聞こえた。
クロードさんの台詞は疑問形だったけど、言いたいことははっきり伝わった。
たぶん、香坂は宇航氏の血を引いていないんだ。後継者なんて、名乗る権利はないってことよね。
「はは、は……ふ、ふざけるな。そんなはずないだろう。僕が、この僕が! お父様の息子じゃない、なんて、そんなはずっ……!」
「ならなぜ、李翠蘭は日本で孫探しを始めたんだろうな?」
きっと、香坂自身も過去に一度ならず疑問を抱いたことがあったんだろう。
自分がいるのにどうして、って。
みるみるポーカーフェイスは崩れ、その顔から血の気が引いていく。
「嘘だ。嘘だ、そんなはずはないっ……! どうせ、フレデリック・リーが、あのペテン師が図った陰謀だろう! 信じないぞっ! よくもそんなでっち上げを……っ!!」
香坂が叫び、拳銃を向けた――私へと。
「え」
全身がガチッとフリーズした。
背筋を、冷たい汗が滑り落ちる。
感覚がマヒしたように動かない中で、聴覚だけが俄かに余裕を無くしたその声を聞きとった。
「止めろっ!! お前が殺したいのは俺のはずだ! 俺を殺せ!! 茉莉花は何も関係ないっ!!」
「はは、お前のその顔が見たかった。お前も知るといい。大切なものを奪われる、その果てしない絶望をなっ!!」
ダメだ、完全に香坂は我を忘れてる。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ、早く!
でも足が、足が動かない。
浅い呼吸が、早鐘のように打つ鼓動が、全身を支配する。