Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
――別に、私は構いませんよ。離婚しても。
解決まで、本当にあと少しのところまできている。
ここからはさらに注意深く行動しなければならない。
さもなくば、今までの努力が水泡に帰す。
そんな慎重な気持ちが、茉莉花の神経を逆なでしてしまったようだ。
彼女がユキに嫉妬していると気づいて……、正直に言おう、嬉しかった。
――そ、そりゃ、自分の好きな人が他の女性と仲良くしてたらっ……嫉妬して当然でしょう? 私とはシ、シてくれないのにっ……。
さらには、涙目で好きだと言われて。
これで理性が崩壊しない男がいたら、男じゃない。
――……好き、です。クロードさんが、好き。好きじゃなかったら、結婚なんて――っんんぅっ……!
ダメだ。
この先には進んじゃいけない、引き返せ。
彼女を放すんだ。
頭の隅でもう一人の俺が微かに叫んでいたが、聞こえないふりをした。
甘えるように高く響く声、柔らかく瑞々しい肢体……妄想など及びもつかないほど、彼女のすべてが俺を熱くし、夢中にさせた。
彼女が俺を好いてくれるというなら構わないじゃないか、このまますべて俺のものにしてしまっても……
最後まで奪わなかった自分を、全力で褒めたい。
本当に、あの時は崖っぷちレベルで危険だった。
頭の中で、「茉莉花に近づかないで欲しいの」という晴美さんの声が過った時、自分の服をまだかろうじて脱いでいなかったことが幸いした。
結局俺は、最後の最後で踏みとどまることができた。
――帰ってきたら、話したいことがある。いや、話さなきゃいけないこと、かな。
しかしこれ以上、紳士の仮面をかぶって彼女の傍にいるのは無理だ。
事件解決も近づいた今なら、もう彼女にすべてを話してもいいんじゃないか。
俺の正体、俺たちの関係、そしてこの結婚の意味……
すべてを知れば、彼女はこの結婚を続けようとは思わないはずだ。
父親の死の原因を作った男と、結婚なんか……。
当然その後は、当初の予定通り離婚、となるだろう。
俺はこの気持ちを一生抱え、彼女の幸せを祈りながら生きていく――絶望の中で。