Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ところが意外な横やりが入った。
なんと富田の死を調べていた刑事が茉莉花に接触、俺が話す前に彼女へ情報を伝えてしまったらしい。
彼女は一体どう思っただろうか。
できれば俺の口から話したかった、と後悔を抱えて待つが、彼女はなかなか戻らない。
ネックレスに仕込んだGPSは正常に作動しており、おばあ様に会いに行ったようだと掴んでいたから大丈夫だとは思っていたものの、やはり不安が募った。
やがて、ようやくマンションの前まで車で彼女が到着したことを知り表へ出る。
そこで俺が目にしたのは、助手席の茉莉花へと覆いかぶさる藤堂の姿。
怒りと嫉妬で、視界が一気に真っ赤に染まる心地がした。
――人妻相手に随分ふざけた真似してくれるじゃないか。覚悟はできてるんだろうな?
各務、と呼ばれたことへの衝撃は、さほど感じなかった。
おそらくバレているだろうなとは予想していたから。
俺の冷静さを奪ったのはそんなことより――
――僕はね、お前の奥さんに、離婚して僕と再婚してくれませんか、って言ったんだよ。
茉莉花が俺から離れていくかもしれない、ついにリアルなものとして迫ってきた、その事実だった。
離婚前提、という計画はどこへやら。
燃え上がった嫉妬に突き動かされるように、部屋へ連れ込んだ彼女の唇を強引に奪ってしまった。
俺はこの時、事態を自分本位に甘く見ていた気がする。
彼女の気持ちはまだ、俺のものだと。
しかし。
――やめ、て……ダメ、お願いっ。
彼女に拒否され、嫌な予感がした。
まさか、藤堂に告白されて心変わりしたのか?
いや、それよりも……
その潤んだ大きな瞳に不信の色が浮かんでいることに気づき、ヒヤリとした。
刑事から、俺と富田の関係でも聞いたんだろう。
俺を信じていいのかどうか、迷ってるに違いない。
――こんなこと……すべきじゃなかった。
じわじわと湧く後悔に、項垂れる。
まずはちゃんと、俺から説明しなきゃならなかったのに。
茉莉花のもの言いたげな視線が、思いのほか堪えた。
もう、愛想を尽かしてしまったのかもしれない。
離婚前提の結婚だと言いながら彼女を手放せない一方で、ズルズルと今まで何も打ち明けられなかった俺が悪い。つまりは全部、自業自得というわけだ。
それ以上、彼女の目を真っすぐ見ることはできなかった。