Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
――わしも、大昔、奴が幼少の頃に会ったきりだからな、確証はないが。
いや、俺もユキも、総帥の頭脳がとんでもなく明晰であることを知っている。
さっそく会場の映像を見てもらうと、彼は迷いなく一人の男を指した。
出席者のリストと照らし合わせると、日本人のようだが……
調べてみよう、とユキと話し合いながら、ふと思い出した。
この男なら、俺も見覚えがある、と。
――それ、どういうこと?
――宮原塾で、講師をしていた大学生に似てる。
俺が出入りしていたのはキズナの方だから一面識もないが、何度か塾の事務室で先生と話してる姿を見かけたことがある。
説明を終えた俺は、ユキや総帥と無言で視線を交わす。
両親の離婚、祖父と父親の早逝、いくつもの不運が重なり、自分が手に入れるはずだった後継者の地位は現総帥に渡ってしまった。
リーズグループへの恨みは、その頃からあったに違いない。
――もしかしたら、自分が李宇航の本当の息子じゃないって、知らないのかもしれないわ。
――当然、愛人が産んだ弟のことは許せないだろうな。ヤツの母方の実家は、リーズグループとの関係も深い名家。だからこそ政略結婚の相手に選ばれたわけだが……。我が母・翠蘭が孫を探しているという噂も、祖父母経由で知ったに違いない。
――そして、弟の情報を知るであろう宮原昌行に近づいた……最初からそのつもりだったのかはわからないが、おそらく先生を殺したことで一旦は安心したんだろう。隠し子の情報は、これで外に漏れることはなくなった、と。
――そうして、次なる目標へ進んだわけね。富田たちを使ってリーズグループの評判を貶め、総帥への不満を煽ろうとしたんだわ。
目指すは、リーズグループの乗っ取り。
失われたパズルのピースが、ピタリとはまった気がした。