Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「だから、自分自身だけの力でどこまでできるのか、やってみようと思ったんだ。それで、海外に――」
「ちょ、ちょっと待て、茉莉花はどうするんだ!?」
ようやく口を挟めた。
挑戦は結構だが、彼女のことは置いていくつもりなのか?
じゃあなぜ告白なんてしたんだ、と気色ばむ俺へ、きょとんと藤堂は瞬いた。
「告白? もちろん本気だったよ。でも彼女は人妻じゃないか。僕の出る幕なんてないだろ」
「いや、そりゃ、そうだが……いずれ離婚、とか」
言葉を濁すと、「離婚!?」と今度はあいつの方が表情を険しくする。
「まさか茉莉ちゃんを捨てるつもりなのか?」
「いや、捨てる、というか、俺の方が捨てられる、というか」
大体、俺はもう茉莉花に「さようなら」って言われてるんだ。
決定的じゃないか。
まぁそりゃ……ユキは、茉莉花の誤解――ユキと俺が付き合っているとか、俺と茉莉花が異母兄妹だとか、思っていたらしい――のせいだと力説していたが……。
「なんだよ、それ」
藤堂の肩が、大げさに上下した。
「もしかして彼女の愛情を疑ってるのか? 呆れるね。茉莉ちゃんが可哀そうだ。毎日こんなに献身的に尽くしてるっていうのにさ」
「それは……俺が彼女を庇ってケガを負ったからで」
「責任を感じてるせいだって?」
ハッと鼻で笑われて、なんだかムカついた。
こんなに悩んで出した結論を、どうしてバカにされなきゃならないんだ?
「それだけじゃない。俺たちにはいろいろと事情が――」
「あぁ茉莉ちゃんから聞いたよ。お前の本当の両親のこととか、それが15年前の事件に繋がったこととかね。僕に言わせれば、『だから何』って感じだけどさ」
「なっ……」
「そもそもお前さ、一度でも彼女に自分の想いをちゃんと伝えたことあるか?」
一度でも、俺の想い……好きだと、愛していると?
「いや、ないな」
答えるや否や、はぁああああっと巨大なため息が聞こえた。
「まぁ、離婚するならご勝手に。ただし一言言わせてもらうなら、お前はバカだ」
「ば、バカ!?」