Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
私たちが向かったのは、一番上層の甲板。
貸切りだからもちろん、誰もいない。
スタッフの姿すら見えないのは、クロードさんが人払いをしてくれたおかげだろう。
視線を巡らせれば、陸地はどこにも見えず、周りはどこまでも続く真っ青な海原。
後方には、船跡の白い泡がまるで花嫁のウェディングヴェールみたいに続いている。
遮るものの何もない太陽の眩い光に目を細めながら歩いていくと、白い丸テーブルが目に入った。
白い花で美しく飾られたそこには、私の両親の遺影、美里さんの写真。さらに中央のミニクッションにガラスの小瓶が2個、置かれている。
『その、白い砂みたいに見えるのが父さんたちの?』
スマホでテーブルを映していると、柊馬の声が聞こえた。
私はカメラで小瓶をズームアップ。
「うん。散骨用に、特別にパウダー状にしてもらった遺骨だよ」
『ようやく、ここまできたんだねぇ』
おばあちゃんの声は、涙に濡れていた。
そう。ようやくここまでたどり着いた。
解決まで15年かかってしまったけど、ようやく2人を新しい旅へ送り出すことができる。
「結局、香坂に罪を償わせることはできなかったが……」
やり場のないいろんな思いのこもったクロードさんの悔しそうな言葉に、私はかぶりを振る。
確かに香坂は自殺してしまった。ただ、富田や私が録音していた彼の自白で、ちゃんと逮捕はできたんだもの――被疑者死亡で不起訴になることは確実とはいえ。
「どうしてあの事件が起きたのか、父が死ななきゃならなかったのか、明らかにできただけで十分です。父も母も、もういいよ、って言ってくれると思います」
言いながら視線を下ろせば、まるでその通りだと言わんばかりの笑みを浮かべた2人の遺影と目が合った。