Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
『まーちゃんの言う通りですよ。昌行さんたちが何より願っているのは、事件のことより、子どもたちの幸せですから』
「おばあ様……おっしゃる通りですね」
言葉少なに頷いたクロードさんは、「じゃあ始めよう」と私の手からスマホを取り上げた。
撮影はクロードさんへお願いして、私はテーブルの前へ。
小瓶のコルク栓を2本とも抜いた。
「……じゃあ、撒くよ」
スマホの画面越しにおばあちゃんと柊馬が頷くのを確認して、手すりギリギリまで身を乗り出す。
「お父さん、お母さん、長い間待たせてごめんね」
そして、海へと2本の小瓶を同時に傾けた。
さらさらと、瓶から白い砂がこぼれ出す。
砂はあっという間に風に乗り、踊るように交じり合って舞い、太陽の光を反射しながら煌き、やがて波間へと溶けていく。
お父さん、お母さん。
産んでくれて、育ててくれて、ありがとう。
あなたたちの娘に生まれて本当によかった――
無言のまま伸びてきた逞しい腕にそっと抱き寄せられて、その胸へ頬を寄せる。
私たちは黙ったまま、砂の消えた海原をじっと見つめた。
『さぁ母さん、旅に出かけるぞ! 足袋履いてな!』
『もーくだらないこと言ってないで行きますよ!』
『あー待ってくれ、今、笑っただろう? 笑ったよな!?』
『あなたのダジャレで笑うようになったら、私も終わりですっ!』
「……なんか今、2人の笑ってる声、聞こえた気がしました」
腕の中から視線を上げると、「不思議だな。俺もだよ」と彼も微笑んだ。
波か風の音だったのかもしれない。
でもそれは、とてもとても楽しそうな笑い声に聞こえたんだ。