Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

私はミルフィーユ、香ちゃんはガトーショコラ。
それぞれお気に入りのケーキで糖分補給して気持ちもなんとなくほぐれてきたところで、速水さんとのやり取りをぽつりぽつりと説明する。

香ちゃんは大きな塊を口に押し込んで、なるほどねと唸った。

「旦那の秘書かぁ。確かにキャリア臭がしたよね、自信たっぷりで」

自信たっぷり……やっぱりクロードさんと似てる。
それで気が合うんだろうか。

「せっかく一緒に来てもらったのに、なんかごめんね。テンション下げちゃって」

「ううん、気にしなくていいよ。あたしは結構楽しかった。やってみたい気はあるけど、お金がねー。やっぱ副社長クラスが通うとこだと、ちょっと高いよね」

「別のゴルフスクールなら、もっと安いところあるかもね?」

レッスン後入会を勧められたものの、当然というか、私の方に入る気は全くなくなっていた。
あのコーチには悪いことしちゃったな。
一生懸命教えてくれたのに。

「そうだ香ちゃん、職場は? シェルリーズホテルの中にはゴルフスクール入ってないの?」

高級ホテルって、スポーツジムやプールも中にあるよね?
シェルリーズホテルは七つ星とも言われる超高級ホテルだから、あってもおかしくなさそう。と思ったら、やっぱり「あるけど」との返事。

「でもいやぁよ、職場の中なんて。茉莉花は? 別のスクールならあの秘書もいないでしょ?」

「うーん……どうしようかな」

コーヒーのカップを手の中で回しながら、とりとめもなく思い出すのはさっきの速水さんの言葉。

――旦那様の趣味に合わせようと必死で頑張って。そりゃそうですよね、あんな優良物件に捨てられたら、優雅な専業主婦生活も終わり。何も残りませんものねぇ。

――必死な女って、イタイだけですけど。まぁせいぜい頑張ってくださいな。


「……私って、イタイ女かな。クロードさんに気に入られようと、必死になって」

「秘書に言われたこと気にしてんの? 好きな人にもっと愛されたいって思うことの何がいけないのよ。普通でしょ? 放っときゃいいのよ。やっかんでるだけなんだから」

「でも……確かに私、何もないんだよね。毎日ラクさせてもらって、柊馬の学費まで出してもらって……彼におんぶにだっこ、っていうか」

< 57 / 402 >

この作品をシェア

pagetop