Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

そこにそびえていたのは、ランドマークとも言うべき規模の高層のツインタワー。

10数階までは専門店やデパート、レストランが入る共通のフロアでつながっていて、その上の部分がシェルリーズホテルの入るファーストタワーとオフィス棟となるセカンドタワーに分かれている、のだけど。

この住所からすると、どう考えても……クロードさんの会社は、あのセカンドタワーの中にある、ような……

いやまさか……
こんなすごい超高層ビルに入居?
家賃おいくら? 想像するだけで気が遠くなるんですが?

個人事務所みたいなものだろうと、勝手に思い込んでた自分を殴りたくなった。

半信半疑のまま、とりあえず確かめてみることにして、私はオフィス棟直通のエントランスへと向かう。

そして、他のビジネスマンたちに倣って、巨大なインフォメーションボードに目を凝らした、ら。

「……嘘でしょ、あった……」

クロードさんの会社、リーズファンドアジアは確かに入居していた。
しかも、1フロアを1社だけで占拠してるみたい。
他のところは、3社とか4社でシェアしてるのに。

まさか、彼がそんなすごい会社の社長だなんて……そりゃ、タワマンの部屋買えちゃうくらいの人だから、不思議じゃないのかもだけど。

いや、気づくの遅すぎでしょ。
いくら苦手だって言っても、もっと早く勉強しておくべきだった。

激しく後悔しながら眩暈すら感じて、私はふらふらと歩き出す。

何人かにぶつかって謝って、を繰り返し、ようやくお目当てのフロアへ停まるエレベーターを見つけた頃には、ぐったり疲労感を覚えたほどだ。

そこで乗り合わせた人は、これまた美男美女ばかり。
こんな最高の環境で勤務しているだけあって、どの人も雑誌の“オフィスコーデ特集”から切り取って来たみたいに自分なりのおしゃれを楽しんでいて、キラキラして見える。

良くも悪くも老舗と言われる中堅どころの商社でしか勤めたことがなく、社内では会社指定の事務スタッフ用の制服を着用していた私には、目からウロコの光景。
ちゃんとした格好をしてきて正解だった、と胸を撫でおろす一方で、冷や汗が止まらない。

こんなところで、クロードさんは私の作ったお弁当を食べるの?

この辺りならいくらだって美味しいお店があるだろうし、テイクアウトだって可能よね。何も、家からわざわざ持って行かなくても……

お弁当を入れた紙袋の持ち手をギュッときつく掴むが、思考はどんどんネガティブ方向へ落ち込んでいく――

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