Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「速水は、別の部署へ異動させることにしたから」
きっぱりとした口調に、「何もそこまでしなくても」と若干心配になる。
そりゃ妻としてはその方が安心だ。
とはいえ、私のせいで優秀なスタッフを失うことになるのは損失なんじゃ――って心配しちゃったのだけど、クロードさんの決意は固かった。
「彼女は俺の指示を無視して、嘘をついた。そんな人間を信用して傍に置いておくことはできない」
「それは、クロードさんのことが好きだから……」
「好き?」
片眉を上げて、皮肉っぽく笑う。
「なおさら、傍には置けない。ビジネスに恋愛感情なんて不要だからな。勝手にカン違いして暴走されても、迷惑なだけだ」
鋭利な刃物みたいに、厳しい台詞。
氷の彫刻のように、冷徹な表情。
これが、ビジネスモードのクロードさんなんだと、息を呑む。
そういえば、ブルームーンでの初対面の時も、こんなカオを見せていたっけ。
私といる時はいつも紳士的で優しいから……って、ダメダメ何を都合よく妄想してるの。
仕事関係以外の人には、基本誰に対しても等しく優しいに決まってる。
私が特別なわけじゃない。
胸の内で自分に言い聞かせて、話を続ける。
「カン違いさせたのは、クロードさんですよ?」
「俺?」
「彼女に言ったんでしょう? 『いい匂いがする』って。それって遺伝子レベルで相性がいい相手みたいですよ?」
私、割とあの発言が気になってたらしい。
あれも嘘なんじゃないかなって、ちょっぴり期待を込めて聞いちゃった。
ところが「なるほど、そういうことか」って彼があっさり頷いたのでがっかり。あれは事実だったみたい。
「あの時は、彼女のつけていた香水が気になって、声をかけただけだったんだが――」
「香水? え、どんなヤツですか?」
クロードさんが好きな香りなら私もつけてみたい、と前のめりにお願いするが、「茉莉花はつける必要ない」ってそっけない。えぇええー。