Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
不満げな私の前で、なぜか彼は視線をわずかに逸らして咳払い。
「……ただ、俺が好きな花の香りに似ていたというだけだ。以前話したことあっただろう――茉莉花だ」
ドキッとした。
いや、だから私のことじゃないから!
「ジャスミン……そ、そう、なんですね」
初対面の時よね。私の栞を見て、そんなことを言ってたっけ。
何の関係もないってわかってるのに、なぜか照れてしまう。えへへ。
「とにかく、茉莉花は何も気にしなくていい。これまで通り、弁当も頼む。俺は気に入ってるんだから」
真正面から柔らかく微笑まれて、もう心臓がバックンバックン飛び跳ねまくってる。
「……はいっ!」
あぁよかった。
少なくとも今現在、彼は私を妻として認めてくれてる。
第三者から見て相応しいかどうか、っていう問題はありつつ……まぁそれはそれ、今後に期待、ってことでいいか。
俄然食欲の出てきた私は、もりもりとお弁当を食べ進めていった。
「少しここで待っててくれるか? 仕事の連絡を何本か入れたい」
綺麗に食べ終わってお弁当箱を片づけてから、スマホ片手に立ち上がった彼にくしゃりと頭を撫でられる。
「わ、わかりました」
ええと、気のせいかな。
乱された髪の毛を整えながら、首を傾げてしまう私。
だっていつもよりクロードさんの態度が甘い、ような……。
あぁそっか。きっと私に気を使ってくれてるんだよね。
怖い目に遭ったし、可哀そうだって。
どうせならこのことがきっかけで、2人の距離がもっと近づいたらいいのにな……。
祈るような気持ちで、私は彼の後姿をじっと見送った。