人生のどん底から、絶頂へ。
先輩と勉強を始めて、2ヶ月が経った。
2ヶ月間、本気で頑張った。
先輩は受験も近いから、多分教えてもらえるのは次のテストが終わるまで。
正直、諦めたい、と思うこともあった。
でも、白翔先輩がいてくれたから、頑張ることができた。

明日から、期末テスト。
現在時刻は夜中の1時だというのに、眠れない。
明日のテストが不安で仕方ない。
先輩は、自分の勉強時間を削ってまで勉強を教えてくれたのに、いい点数を取れなかったらどうしよう。
もう、見捨てられるかもしれない。
白翔先輩に見捨てられたら、もう私の味方はゼロ。
不安で眠れない。
そんな時、スマホが震えた。

『もしもし、』

私は、涙を拭いて電話に出た。

『もしもし、って、泣いてる?』

一瞬でバレた。声だけで気づいてくれる白翔先輩。大好きだなぁ。

『ちょっと、テストが不安で』

『大丈夫だよ。気楽に行こ。
もちろん、結菜がいい点数取ってくれたら嬉しいよ。でも、いい点数取れなくても、見捨てたりしない。絶対に。』

なんだろう。この、安心感。
白翔先輩の安心感は世界一だと思う。
私は、気づいたら泣き止んでいた。

『てか、結菜って兄弟とかいるの?』
『一人っ子です』
『うわ、一人っ子とかちょー可愛い』
『なんですか、それ』
『可愛いんだもん』
『やめてください、恥ずかしいので。』

可愛がられる感覚。
誰かが私の味方についてくれる安心感。

『あのね、?結菜が土手で泣いてるの見て、俺が助けたいと思った。
俺、結菜と勉強していくうちに気づいたんだけど、結菜はもっと甘えることを覚えないとダメだよ。』

甘えること。
誰かに甘えたの、何年前だろう。

『結菜。家族のことで、悩んでるんだろ。』

なんで。
なんでバレちゃうんだろう。

『結菜は自分の親のこと、いつも"両親"って呼ぶじゃん。昔は、そんなんじゃなかったんじゃない?』

蘇る記憶。


『たまに、昔のこと思い出して、胸が苦しくなるんでしょ。いつから、こんな風になっちゃったんだろう、って。昔は、仲良かったのに。
昔は、名前で呼んでくれてたのに、って。』

白翔先輩の声に、涙が止まらなくなる。
私の気持ちを、どんどん言葉にする白翔先輩。

『、、、なんで、わかるんですか? 』

『俺も、同じだから。
・・・親に、認められたい。』

白翔先輩も、同じ。
私の辛さを、わかってくれる人がいた。
白翔先輩も、こんなに辛い思いをしているなんて、気づかなかった。
白翔先輩も、同じなんだ。

『結菜。明日のテストで一緒に、親のこと見返してやろうな。俺も、頑張るから。』

『明日、頑張ります。』

『おう、一緒に頑張ろうな。』

先輩にとって、受験前最後のテスト。
絶対にいい点数をとって、両親を見返したい。
白翔先輩も一緒に頑張ってくれるから、きっと大丈夫。
そう言い聞かせて、眠りにつく。
白翔先輩と、電話を繋いだまま。
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