三十路アイドルはじめます
21.お互い男を見る目がないですね。
「梨子さん。私、昨日の出演を見たというフランスのボワール音楽大から留学の誘いが来たんです。私、この話を受けようと思います」
私は林太郎に浮気したと責められることを予想していたのに、ルナさんは自分の留学話をしてきた。
雅紀により惑わされたことがあっても、どこまでも「音楽」に一途な人が彼女だ。
「ルナさんの才能は世界の宝だから、当然だよ」
私は謙虚すぎる上に自己肯定感の低いルナさんに、私の本心が伝わるように真剣に伝えた。
「ありがとうございます。両親には、妊娠している身で留学なんてと反対されました。でも、雄也お兄ちゃんは子供はどこでも産めるから行ってこいって言ってくれたんです」
私はルナさんから出た雄也さんの名前に心臓がはねた。
「梨子さん。雄也お兄ちゃんは、欲しい言葉をいつもくれる人です。私が100キロデブだった時から、私に接する態度も変わりません。雄也お兄ちゃんは裏切らない人ですよ」
ルナさんは、やはり私が林太郎と噂になっている報道を見たのだろう。
私も林太郎については、彼が何を考えているか分からなくて不安を感じている。
その不安を察するようにルナさんが、雄也さんなら大丈夫だと伝えてくる。
「そうだね。心配してくれてありがとう。ルナさんから見れば私はあなたを傷つけた側の人間なのに⋯⋯」
雅紀と公的に結婚した彼女から見れば、私は不倫相手だ。
それなのに、彼女は私のことを心配しキラキラした楽曲まで提供してくれた。
「それは、お互い様です。私も梨子さんを傷つけました。酷いこと沢山言いました。それにしても、お互い男を見る目がないですね」
ルナさんが笑いながら言ってくれるから、私も雅紀とのことを笑い話にしてしまおうと思った。
「絶対的に愛せる男を見つけたルナさんは強いです」
私はお腹に手を当てながら、彼女の強さの根源に想いを馳せた。
「強くなりたいと思えるようになったのは、お腹の子のお陰ですね。私、この子に恥じないような母親になって見せます」
ルナさんはそう言い残すと、去っていった。
♢♢♢
「梨子姉さん! 御曹司ってなんぞ? すごいじゃないですか、もうアイドル辞めれるじゃないですか」
練習で3人娘が集合すると、真っ先にりんごが私に突撃してきた。
「彼とは何でもないの。 それに私は金持ちになりたくてアイドルやってるんじゃない。『フルーティーズ』をてっぺんを取らせたくてやってるの」
私は自分の意見を正直に3人娘に話した。
アイドルをする目的はそれぞれだが、私は関わった以上この3人娘に武道館を見せてやりたい。
「それでこそ、梨子姉さんです。色恋営業の方にいったかと残念に思いましたが、やはり私たちはパフォーマンスで勝負すべきですよね」
苺が私に握手を求めてくるので応じた。
彼女達のような幼い子が「色恋営業」などの言葉を平気で使うのが芸能界なのかと胸が苦しくなった。
「梨子姉さん。昨日の番組と梨子姉さんのスキャンダルで今『フルーティーズ』は登り竜ですよ」
最年少で天然発言ばかりしていたと思っていた桃香が、明らかに私を気遣ってくれる。
私のスキャンダルでこの子たちの気持ちを乱したのは明白だ。
これからは、『フルーティーズ』のことだけを考えようと思えた。
「りんご、苺、桃香、心配かけたね。私の心は『フルーティーズ』にしかないから安心して。次は冬フェスに向けてパフォーマンンスに磨きをかけなきゃね」
私が手をさしたすと、3人娘が手を重ねてくれる。
「武道館まで全力疾走だ! 『フルーティーズ』行くぞー!」
「オー! 」
私の掛け声に3人娘が大きな声で合わせてきた。
「こんにちは。果物さん達。梨の娘をお借りして良いですか?」
練習室で決起集会をしていた私たちの元に、林太郎が現れた。
イケメン御曹司の登場に3人娘もソワソワし出す。
彼女たちは芸能界に染まりきっていない、純粋さを持った子たちだ。
「どうぞ、もぎたての梨を頂いてください。私たちはこのまま練習を続けるので」
りんごが私を林太郎に押し出す。
「梨子姉さん。スポンサーになってくれるかもしれない企業の社長様です」
耳年寄りっぽい桃香が私にひっそりと耳打ちしてくる。
「梨子さんが本当に好きなら、突っ走ってください。もう30歳ですよ」
苺は急に何かを悟ったように私を送り出した。
「じゃあ、きらり。話をしようか。何だか、俺から逃げようとしていたみたいだし⋯⋯」
「いやあ、昨日社長に就任したばかりで為末さんは忙しいですし、遠慮しておきます」
よく考えれば、友情関係を電話1本で断ち切ろうとした私はかなり酷い。
でも、彼に恋愛感情を抱いてないのに噂になるのは抵抗がある。
「何が為末さんだよ。『フルーティーズ』の子達は次のうちのCMキャラクターに起用するから楽しみにしててね」
伝家の宝刀とも言える殺しの文句で、3人娘は湧き立ち私は林太郎に引き渡された。
私は林太郎に浮気したと責められることを予想していたのに、ルナさんは自分の留学話をしてきた。
雅紀により惑わされたことがあっても、どこまでも「音楽」に一途な人が彼女だ。
「ルナさんの才能は世界の宝だから、当然だよ」
私は謙虚すぎる上に自己肯定感の低いルナさんに、私の本心が伝わるように真剣に伝えた。
「ありがとうございます。両親には、妊娠している身で留学なんてと反対されました。でも、雄也お兄ちゃんは子供はどこでも産めるから行ってこいって言ってくれたんです」
私はルナさんから出た雄也さんの名前に心臓がはねた。
「梨子さん。雄也お兄ちゃんは、欲しい言葉をいつもくれる人です。私が100キロデブだった時から、私に接する態度も変わりません。雄也お兄ちゃんは裏切らない人ですよ」
ルナさんは、やはり私が林太郎と噂になっている報道を見たのだろう。
私も林太郎については、彼が何を考えているか分からなくて不安を感じている。
その不安を察するようにルナさんが、雄也さんなら大丈夫だと伝えてくる。
「そうだね。心配してくれてありがとう。ルナさんから見れば私はあなたを傷つけた側の人間なのに⋯⋯」
雅紀と公的に結婚した彼女から見れば、私は不倫相手だ。
それなのに、彼女は私のことを心配しキラキラした楽曲まで提供してくれた。
「それは、お互い様です。私も梨子さんを傷つけました。酷いこと沢山言いました。それにしても、お互い男を見る目がないですね」
ルナさんが笑いながら言ってくれるから、私も雅紀とのことを笑い話にしてしまおうと思った。
「絶対的に愛せる男を見つけたルナさんは強いです」
私はお腹に手を当てながら、彼女の強さの根源に想いを馳せた。
「強くなりたいと思えるようになったのは、お腹の子のお陰ですね。私、この子に恥じないような母親になって見せます」
ルナさんはそう言い残すと、去っていった。
♢♢♢
「梨子姉さん! 御曹司ってなんぞ? すごいじゃないですか、もうアイドル辞めれるじゃないですか」
練習で3人娘が集合すると、真っ先にりんごが私に突撃してきた。
「彼とは何でもないの。 それに私は金持ちになりたくてアイドルやってるんじゃない。『フルーティーズ』をてっぺんを取らせたくてやってるの」
私は自分の意見を正直に3人娘に話した。
アイドルをする目的はそれぞれだが、私は関わった以上この3人娘に武道館を見せてやりたい。
「それでこそ、梨子姉さんです。色恋営業の方にいったかと残念に思いましたが、やはり私たちはパフォーマンスで勝負すべきですよね」
苺が私に握手を求めてくるので応じた。
彼女達のような幼い子が「色恋営業」などの言葉を平気で使うのが芸能界なのかと胸が苦しくなった。
「梨子姉さん。昨日の番組と梨子姉さんのスキャンダルで今『フルーティーズ』は登り竜ですよ」
最年少で天然発言ばかりしていたと思っていた桃香が、明らかに私を気遣ってくれる。
私のスキャンダルでこの子たちの気持ちを乱したのは明白だ。
これからは、『フルーティーズ』のことだけを考えようと思えた。
「りんご、苺、桃香、心配かけたね。私の心は『フルーティーズ』にしかないから安心して。次は冬フェスに向けてパフォーマンンスに磨きをかけなきゃね」
私が手をさしたすと、3人娘が手を重ねてくれる。
「武道館まで全力疾走だ! 『フルーティーズ』行くぞー!」
「オー! 」
私の掛け声に3人娘が大きな声で合わせてきた。
「こんにちは。果物さん達。梨の娘をお借りして良いですか?」
練習室で決起集会をしていた私たちの元に、林太郎が現れた。
イケメン御曹司の登場に3人娘もソワソワし出す。
彼女たちは芸能界に染まりきっていない、純粋さを持った子たちだ。
「どうぞ、もぎたての梨を頂いてください。私たちはこのまま練習を続けるので」
りんごが私を林太郎に押し出す。
「梨子姉さん。スポンサーになってくれるかもしれない企業の社長様です」
耳年寄りっぽい桃香が私にひっそりと耳打ちしてくる。
「梨子さんが本当に好きなら、突っ走ってください。もう30歳ですよ」
苺は急に何かを悟ったように私を送り出した。
「じゃあ、きらり。話をしようか。何だか、俺から逃げようとしていたみたいだし⋯⋯」
「いやあ、昨日社長に就任したばかりで為末さんは忙しいですし、遠慮しておきます」
よく考えれば、友情関係を電話1本で断ち切ろうとした私はかなり酷い。
でも、彼に恋愛感情を抱いてないのに噂になるのは抵抗がある。
「何が為末さんだよ。『フルーティーズ』の子達は次のうちのCMキャラクターに起用するから楽しみにしててね」
伝家の宝刀とも言える殺しの文句で、3人娘は湧き立ち私は林太郎に引き渡された。