三十路アイドルはじめます
「ごめん、言い間違えた」
「何だよそれ」
 言い訳さえも思いつかなくて謝る私に、林太郎が笑い返してきて安心する。

「実は友永社長に指定された場所に行ったら、6人の男に囲まれて大変だったんだよ。そこを雄也さんが助けてくれたの」

「だから腐った奴は変わらないって言っただろ。それに、渋谷雄也のことも盲目的に信用し過ぎ。危なっかし過ぎるよ、きらりは⋯⋯」
 林太郎は怒っているけれど、私の髪を優しく撫でてくれている。
 その感触が気持ちよくて、涙がひいてきた。

「独立した方が良いよね。でも、違約金のこともあるし、どうしたら良いのか」

「俺が全部何とかするから、きらりはもう悩まないで。少し寝たら? 着いたら起こしてあげるから」
 私はその言葉に甘えて、目を瞑って彼の肩に頭を乗せた。

 本当は林太郎を頼るのは間違っているかもしれない。
 しかし、彼が全部何とかすると言った言葉に頼ってしまいたくなった。

 それくらい私は自分の想像を超えた酷い出来事に心が疲弊していた。
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