三十路アイドルはじめます

32.そんなお年を召した方のセクシーも世の中に需要があるの?

「きらり、起きて! もう、夕方だよ」
 体を揺さぶられている感覚があって、目を開けると林太郎の顔があった。

 私の部屋と違い、オシャレなデザイナーズ家具が並んでいるこの部屋は彼の部屋だろう。

「ごめん! 私、あのまま寝ちゃってたの?」
「何度も起こそうとしたんだけど、全然起きなかった。カレー作ったから食べる?」
「食べる!」
 彼についていくと、吹き抜けのダイニングルームについた。

 めちゃくちゃ背が高い観葉植物があって、部屋の中なのに玉砂利が敷いてあるゾーンがある。

 そして、その奥には滝が流れていた。
(マンションの中だよね⋯⋯天井高いし、すごい部屋)

 彼が椅子を引いてくれたので座ると、本格的なスパイスで作ったようなカレーが置いてある。
「すごい! これ林太郎が作ったの? ナンも手作り? 頂きます!」
 彼が微笑んで頷いたので、私は食べ始めた。

「アメリカにいた時、インド出身の友達から作り方を教わったんだ。きらり、辛いの好きだよね。お口に合うかな?」

「めちゃくちゃ美味しいよ。ありがとう! それにしても今日レッスンをサボっちゃった。寝過ぎだね、私⋯⋯」
 私の言葉を聞いて徐に林太郎が書類を出してきた。

「バシルーラとの契約は解除してきたから安心して。あの事務所は頃合いを見計らって潰す予定」

「えっと、林太郎に違約金肩代わりさせちゃってる? 400万円は払うからちょっと待ってね。それと事務所潰すってどう言うこと?」

「あんな契約、無効にできるに決まってるだろ。事務所も友永社長も社会的に抹殺してやる。俺はやられたら100倍返しする主義なの」

 今回被害に遭いそうになったのは、林太郎じゃやなくて私なのだが彼が自分のことのように怒ってくれるのは嬉しい。

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