三十路アイドルはじめます
「あと、きらりが署名するだけになってるから。今から、区役所に婚姻届を出しに行くよ」
「今から? もう、入籍しちゃうの? 両親に挨拶に行って、婚姻の証明欄に署名して貰ったりしないの?」
「両親の署名なんていらないよ。もう、成人した大人なんだから」
「えっと、この涼宮さんって誰?」
私は2つある婚姻の証明欄に見知らぬ名前が並んでいることに気がついて尋ねた。
「私です」
目の前の運転手が、遠慮がちに手をあげる。
「あ、ご署名頂きありがとうございます。いつも安全運転してくださっていることに感謝してます」
私は思わず反射的に彼に頭を下げた。
それを見て林太郎が笑いを堪えている。
「林太郎、結婚は早いよ。男性の平均初婚年齢は31歳だよ。あなたは、まだ26歳なんだから」
私が林太郎が結婚を思いとどまるよう説得しようと試みると、彼は途端に不機嫌な顔をした。
「どうして俺が平均に合わせなきゃいけないの? 俺がきらりと結婚したいから今するんだよ。きらりは俺のこと好きじゃないの? 好きなら署名して」
まるで気持ちの証拠を見せる踏み絵のように署名を促され、思わず署名してしまった。
「林太郎、さっきプロポーズしてくれて婚約指輪を貰ったばかりだし、もう少し婚約期間を楽しまない?」
「俺の座右の銘は先手必勝だから。はい、結婚指輪」
彼が指輪のケースを開けて結婚指輪を出してきた。
私は婚約指輪のダイヤモンドが大きすぎて、誘拐されるんじゃないかと不安だったので結婚指輪のシンプルさにホッとする。
(それにしても、先手必勝って⋯⋯一体、誰と戦っているのよ)
「きらり、幸せそう。これから、もっと幸せにするからね」
私のホッとした表情を喜びの表情と捉えた彼は、私の頬に軽くキスをしてきた。
「ありがとう。でも、私の両親はともかく林太郎のご両親には入籍前に挨拶したいかな」
「うちの母親がきらり見たら、対抗意識燃やして凄いことになると思うよ。相手にするのが、キツく感じたら言ってね。俺がきらりを守るから」
「それって、この泥棒猫! 可愛い息子を奪いやがってみたいなこと?」
私の言ったことがツボったのか、林太郎はまた爆笑し出した。
(この幸せそうな顔を見てられるなら、結婚しちゃっても良いのかな⋯⋯)
結局じゃれあっている間に区役所に到着して、私は為末きらりになった。
「今から? もう、入籍しちゃうの? 両親に挨拶に行って、婚姻の証明欄に署名して貰ったりしないの?」
「両親の署名なんていらないよ。もう、成人した大人なんだから」
「えっと、この涼宮さんって誰?」
私は2つある婚姻の証明欄に見知らぬ名前が並んでいることに気がついて尋ねた。
「私です」
目の前の運転手が、遠慮がちに手をあげる。
「あ、ご署名頂きありがとうございます。いつも安全運転してくださっていることに感謝してます」
私は思わず反射的に彼に頭を下げた。
それを見て林太郎が笑いを堪えている。
「林太郎、結婚は早いよ。男性の平均初婚年齢は31歳だよ。あなたは、まだ26歳なんだから」
私が林太郎が結婚を思いとどまるよう説得しようと試みると、彼は途端に不機嫌な顔をした。
「どうして俺が平均に合わせなきゃいけないの? 俺がきらりと結婚したいから今するんだよ。きらりは俺のこと好きじゃないの? 好きなら署名して」
まるで気持ちの証拠を見せる踏み絵のように署名を促され、思わず署名してしまった。
「林太郎、さっきプロポーズしてくれて婚約指輪を貰ったばかりだし、もう少し婚約期間を楽しまない?」
「俺の座右の銘は先手必勝だから。はい、結婚指輪」
彼が指輪のケースを開けて結婚指輪を出してきた。
私は婚約指輪のダイヤモンドが大きすぎて、誘拐されるんじゃないかと不安だったので結婚指輪のシンプルさにホッとする。
(それにしても、先手必勝って⋯⋯一体、誰と戦っているのよ)
「きらり、幸せそう。これから、もっと幸せにするからね」
私のホッとした表情を喜びの表情と捉えた彼は、私の頬に軽くキスをしてきた。
「ありがとう。でも、私の両親はともかく林太郎のご両親には入籍前に挨拶したいかな」
「うちの母親がきらり見たら、対抗意識燃やして凄いことになると思うよ。相手にするのが、キツく感じたら言ってね。俺がきらりを守るから」
「それって、この泥棒猫! 可愛い息子を奪いやがってみたいなこと?」
私の言ったことがツボったのか、林太郎はまた爆笑し出した。
(この幸せそうな顔を見てられるなら、結婚しちゃっても良いのかな⋯⋯)
結局じゃれあっている間に区役所に到着して、私は為末きらりになった。