月ノ蝶、赤縄を結ぶ
紅くんがスーツから部屋着に着替え、私を膝の上に乗せたところでこう切り出した。
「そういえば紅くん、夕食食べてきた?」
「うん。帰りの車で」
「そっか。じゃあ今日何の日か知ってる?」
「バレンタイン」
「わぁ即答」
それだけ期待してくれてたってことかな。
じゃあちょっと待ってて、とお願いして冷蔵庫の中から生チョコの乗ったお皿を取り出し出戻った。
「じゃーん!紅くんに生チョコ作ったんだ!」
「え、作ったってことは茜の手作り?」
「まぁ鴾に手伝ってもらったけどね」
お皿を机に置いて再び紅くんのお膝に座った私の頭を撫でながら、まじまじと生チョコを見ている。
「・・・凄い。ありがとう茜」
「よかったら今食べてみて!」
取りやすいようにお皿を紅くんの前に差し出したけど、紅くんはそれに手を付けず私の顔を覗き込んだ。