月ノ蝶、赤縄を結ぶ


「ただいま。寂しかったの?」

「うん。早く会いたかった」

「そっか」



 人は絶対に生き返らないし、過去に戻ることはできない。

 だから今更私がどうこう言ったところで何も変わらない。

 それでも、過去の紅くんごと抱きしめたいと思った。



「紅くん、好き」

「俺も茜が好きだよ」



 するりと返してくれる言葉にも、しっかりと気持ちがこもっている。



「私はずーっと紅くんと一緒にいるからね」



 だから、安心してね。



「ありがとう」



 私の真意が伝わったかは分からないけど、紅くんは疲れがとれたかのように、小さく笑った。






 思わぬ事実を知って動揺したけれど、本来の目的も忘れちゃいけない。
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