月ノ蝶、赤縄を結ぶ
 そんな紅くんの腕に自分の手を重ねた。



「ならないし思わないよ。私は紅くんのことがずっと好きだし、紅くんに出会えたおかげで今も幸せだよ」



 こんなときですら私の気持ちを優先してくれる紅くんだからこそ、私は惹かれたんだよ。



 腕をとん、とん、と叩いてあやすと、甘えるように私の肩に頭を預けてきた。

 さらさらな銀髪が頬をくすぐる。



「・・・あと、俺のことも怖くない?」

「え?」

「どんな形であれ、俺はあの女を──」

「怖くないよ。だってここはそういうところでしょ?ちゃんと分かった上で紅くんと一緒にいるんだよ」



 最期まで紅くんの口から言わせたくなかった。

 これ以上紅くんには自分の首を絞めないでほしい。



「罪悪感が消えないなら、私と半分こしよ」



 紅くんの心情を想像すると胸が張り裂けそうになって、椅子から立ち上がり飛びついた。

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