月ノ蝶、赤縄を結ぶ
 思いがけず押し倒すような形になったけど、それよりも大切なことがある。



「だから大丈夫だよ、紅くん。話してくれてありがとう」



 紅くんの頬を両手で包み込み、慈しむように唇を重ねた。

 ゆっくりと離れると、微かに頬を染めた紅くんが映った。

 泣きそうにも恨めしそうにも、何かをこらえているようにも見える。



「・・・茜、今のはずるい」

「え?────わぁ!?」



 ぐるっと視界が反転し、逆に私が紅くんに押し倒される体制になった。

 私を見下ろす目が獰猛に光っている。

 時が止まったかのように動けない。



「ね、いい?」



 上目遣いで私を甘く誘惑してくる。

 焦らすように腰をなぞられてピクっと跳ねてしまった。

 紅くんに触られたところから熱を帯びていく。



「最後までは、まだダメ」



 雰囲気に呑み込まれないように絞り出した声は、自分のものとは思えないほどか細くて艶っぽい。

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