籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜
あっ…、この声は――。


「そんなところで、なにぼうっと突っ立ってんだよ」


…お兄ちゃんだ!


「お兄ちゃん…!もう体…、なんともないの!?」

「…体?このとおり、ピンピンしてるけど?」


お兄ちゃんはキョトンとしながら、不思議そうに自分の体に目を向ける。


「よかった…。治ったんだ」

「さっきからなに言ってんだよ、美鳥。早くこっちこいよ!」

「うん!」


わたしは、お兄ちゃんのもとへ向かう。


…だけど。

走っても走ってもお兄ちゃんには追いつかない。


それどころか、どんどんお兄ちゃんの姿が遠くなるばかり。


「お兄ちゃん…!お兄ちゃん…!」


わたしがどれだけ叫んでも、手を伸ばしても、お兄ちゃんは振り返ってくれない。



「…お兄ちゃんっ!!」


わたしは、はっとして顔を上げる。
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