悠久の絃 2
夜、いつも悠が来て診察室に行く時間。部屋を抜け出して階段を登った。

エレベーターは乗れないし、この病院は上の階が沢山あるのを知っている。

とりあえず疲れるまで登って、ロビーのような階を見つけた。



この階は来たことがある。

そうだ。去年の誕生日、退院できなくて悠が病院の中を散歩させてくれたんだ。
なんとなくだけど覚えてる。えっと、、、


あった。

見つけたのは北棟と南棟を繋ぐ渡り廊下。その前に、とても座り心地がいいソファがある。

ソファに腰掛け、悠になんて言い訳しようか考えた。




「――絃じゃないか。こんなところでどうした?」


横から歩いて来た先生が私の顔を見てそう聞いた。

この人、たしか、、お父さんのお友達さん。


「悠先生はどうした?一人で来たのか?」





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