悠久の絃 2
「あ、呼ばれたね。一人で行ける?」


「……うん」



大丈夫だよ、と優しく背中を押されて夜星先生の診察室に入った。

中には夜星先生と律先生とこのちゃん。

……やっぱり、嫌、かも。


「こんにちは。絃ちゃん、そこ座って?」


くるくる回ってころころ動けるイス。できるだけ診察からは逃げたくて、座ったあとに少し後ろに下がる。


「退院して二週間くらいしか経ってないからね。そんなに心配しなくて大丈夫だよ。
お薬はなにか飲んだ?」

「飲んでないです」

「苦しくなったり、胸の辺りが痛くなったりは?」

「してないです」

「テストは今日で終わったんだよね。ここ2、3日はあんまり眠れてないかな?」

「……っと、でも、五時間、くらいは」

「少ないよ。最低でも七時間は確保して。
走ったり、激しく体を動かしたりはしてない?」

「はい」

「他、何か話しておきたいことはある?」

「ない、です」

律「あるだろ。一週間前の夕飯、覚えてない?」


え、、えっと、何かあったっけ、、?
夕飯、?うーんと、、


律「樹、先週の夕飯のとき吐いてる。たぶん食べ過ぎだと思うけど、ほぼ全量吐いてるから夕飯は一回飛ばしてると思って」

「わかりました。
これ、絃ちゃんから聞きたかったな」

「…すみません」

「ん〜………よし。じゃあ胸の音聞くね。」



何度されても慣れない。金属が肌に直接触れる感覚。

その間律先生は真剣にパソコンの画面を見つめてて、夜星先生は若干ピリピリしたオーラが溢れてて、このちゃんはいつもみたいに優しくて。

この三人の温度差で風邪ひきそう。


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