悠久の絃 2
ピクっと麻河先生の眉が動いた。そこから口が動くまではすごくすごく慎重そうで、診察室の空気が止まったような気がした。

「どうして、そう思う?」


「お兄ちゃんたちのことを思い出そうとすると、嫌なことも思い出しちゃうんです。なんか引っ張られちゃって、すごく怖くなっちゃって。お兄ちゃんたちが病院にいるってことは、たぶん私の今のことも知ってるじゃないですか。たぶん、広持先生と同じ感じだと思うから。
だから、心配してくれてるのかな、、って思って」



麻河先生は私の言葉をゆっくり、しっかり、丁寧に理解してくれたんだと思う。2、3分話さず、その後、真剣な顔で向き合ってくれた。


「ごめんね。見つけた方が楽なんて言い方、間違ってたね。」


「大丈夫ですよ。それに私、お兄ちゃんたちに言いたいことがあるんです。だから、私も早く見つけたいの…」


「なんて言いたいの?」


「ふふっ、怒られちゃうかもしれないけど、『私のそばにいるならはやく私の病気治してよ!』って。先生たちには内緒にしてください」


「うん、もちろん。」


「お兄ちゃんたち、どこにいるんでしょうね……でも、考えたら、思い出しちゃうし。苦しいのはやだなぁ…」


「冒険は無理しない程度でね。この夏休みじゃなくてもいいし、しなくてもいい。苦しいなら逃げること。ちょっと気になったときにやってみようか。」


「はい」



あとは何か話したいことある?と、聞かれたけど特にないから首を横に振った。

「わかった。またなにか話したいことがあったらいつでもおいで」



手を振ってくれた麻河先生に会釈して、夜星先生の診察室に帰ってきた。


そういえば、お腹、、!

いや、何もしてなければ痛くないんだし、この前の治療から一ヶ月も経ってないし……







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