愛を教えて、キミ色に染めて【完】
「お前は、俺に守る事の大切さと愛を教えてくれた。お前に出逢えなかったら、きっと一生知る事はなかったと思う。ありがとうな、円香」
「ううん、私の方こそ、伊織さんに出逢えて、良かったって思っています。初めて好きになった人が伊織さんで良かった……私の初めてをあげられたのが、貴方で良かった」
「円香――」
「――っ、……いおり、さん……」

 何度唇を重ねても、物足りない。

 何度深く繋がっても、物足りない。

 好き過ぎて、一秒足りとも離れたくない。

 それくらい大切で愛おしい存在。

「……い、おりさん……あんまり、跡、つけちゃうと……その、明日、ドレスの試着するのに……恥ずかしい、から……っ」

 伊織が円香の白い肌にいくつもの赤い印をつけると、明日の事を思い出した彼女は控え目に抗議する。

 けれど、自分のモノだという印を沢山刻み込みたいと思ってしまう伊織はなかなか止めようとしない。

「いいじゃねぇか、気にしなくても」
「――ッ、だ、ダメ、です……」

 一つ、また一つ付けられる度、駄目と言いながらも伊織から逃れる事をしない円香。

「本当に駄目なら、もう止めるぜ?」
「……意地悪……。駄目、だけど……やめちゃ、嫌なの……」
「我がままだな、それ」

 確かに矛盾してると、円香は思う。恥ずかしいけれど、本当は嬉しいのだ。

 自分が、彼の色に染まっていくようで。

「……我がままな女は、嫌いですか?」
「お前の我がままなら、許してやる」
「それじゃあ、まだ、やめないで……」
「――了解」

 
 二人の出逢いは、二人の運命を大きく変えた。

 これからも悩む事、立ち止まる事、悲しい思いをする事、沢山の困難が待ち受けているだろうけれど、

 愛を知り、互いの色に染まった二人にならばきっと、どんな困難も乗り越えていけるはずだ。


 そして、それを乗り越えた先には――


 今よりももっと幸せな未来が待っているだろう。


- END -
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