《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
暫くして、神楽の規則正しい寝息が聞こえてくる。
「ねぇ百瀬くん」
「ん?」
「百瀬くんは小さい時、やっぱり今の神楽みたいに部屋で一人で寝てたの?」
「んー、どうだったかな? まあ、小学校上がったら、部屋で一人で寝るのが当たり前だったな」
「どうして?」
「勉強机だよ。当時はあれが嬉しくてさ、基本部屋で過ごす事が多かったから、寝る時も自然と部屋で寝てた」
「そうなんだ?」
「ランドセルとかもさ、買ってもらった時は凄く嬉しかったな」
「確かに嬉しかったかも」
「今年、神楽も幼稚園の年長組になって、来年は小学校入学……何かさ、早かったよな、ここまで」
「そうだね、本当、あっという間だった」
「神楽も成長したし、本当しっかりしてるよな。今日一日二人で過ごしてみて、凄く実感したよ」
「うん。これからこの子が産まれたらもっとだよね。良いお兄ちゃんになろうって今以上にしっかりすると思う」
二人で神楽の可愛い寝顔を見つめながら会話を弾ませていくと、百瀬くんが突然、
「そうだね…………ねぇ、亜夢はさ、それが淋しいの?」
そんな質問を投げ掛けてきた。
「え?」
「神楽が色々と出来るようになるのは嬉しいって喜んでいるけど、時々悲しそうな表情してるからさ」
「私、そんな顔してたの? 淋しい……のかも。神楽の成長は嬉しいけど、私なんて必要なくなるんじゃないかって……」
「そんな訳ないでしょ? 神楽には亜夢が必要だよ? 勿論、俺にも」
「百瀬くん……。もしかして、神楽の前でも表情に出てた?」
「別にあからさまに出てる訳じゃないから神楽は気付かないよ。そこは大丈夫。あくまでも俺が気付いただけ。他でもない亜夢の事だからね」
「そっか……あのね、今日は本当に嬉しかった。百瀬くんもだけど、神楽が色々考えてくれたんだって。でもね、それと同時に……そういうの、後何年くらいなのかなって考えちゃった」
「どういう事?」
「だって、いずれ神楽にも好きな子が出来るでしょ? そうしたら、ホワイトデーはその子の為に一生懸命になると思うから、今日みたいなのは後どのくらいなのかなって……思って」
「亜夢、まだ気が早いよ。神楽はまだ当分、亜夢が好きだと思うよ? 今日だって常に『ママがママが』って感じだったんだから」
「そう、なの?」
「うん。神楽はしっかりしてるけど、やっぱりまだまだ子供だよ。大丈夫、俺らの元から離れるのはまだまだ先だと思うから」
「……そっか」
百瀬くんのその言葉で、胸の痞えが取れた気がした。
「さてと、俺らもそろそろ寝よっか」
「うん、そうだね」
「おやすみ、亜夢」
「おやすみ、百瀬くん」
神楽を抱き締めるように横になった私たちはしっかりと手を繋いで眠りに就いていく。
この日は愛おしい二人と共に眠れたからなのか夢見が良くて、朝目が覚めた時はいつも以上に凄く幸せな気分になれたのだった。
ーENDー
「ねぇ百瀬くん」
「ん?」
「百瀬くんは小さい時、やっぱり今の神楽みたいに部屋で一人で寝てたの?」
「んー、どうだったかな? まあ、小学校上がったら、部屋で一人で寝るのが当たり前だったな」
「どうして?」
「勉強机だよ。当時はあれが嬉しくてさ、基本部屋で過ごす事が多かったから、寝る時も自然と部屋で寝てた」
「そうなんだ?」
「ランドセルとかもさ、買ってもらった時は凄く嬉しかったな」
「確かに嬉しかったかも」
「今年、神楽も幼稚園の年長組になって、来年は小学校入学……何かさ、早かったよな、ここまで」
「そうだね、本当、あっという間だった」
「神楽も成長したし、本当しっかりしてるよな。今日一日二人で過ごしてみて、凄く実感したよ」
「うん。これからこの子が産まれたらもっとだよね。良いお兄ちゃんになろうって今以上にしっかりすると思う」
二人で神楽の可愛い寝顔を見つめながら会話を弾ませていくと、百瀬くんが突然、
「そうだね…………ねぇ、亜夢はさ、それが淋しいの?」
そんな質問を投げ掛けてきた。
「え?」
「神楽が色々と出来るようになるのは嬉しいって喜んでいるけど、時々悲しそうな表情してるからさ」
「私、そんな顔してたの? 淋しい……のかも。神楽の成長は嬉しいけど、私なんて必要なくなるんじゃないかって……」
「そんな訳ないでしょ? 神楽には亜夢が必要だよ? 勿論、俺にも」
「百瀬くん……。もしかして、神楽の前でも表情に出てた?」
「別にあからさまに出てる訳じゃないから神楽は気付かないよ。そこは大丈夫。あくまでも俺が気付いただけ。他でもない亜夢の事だからね」
「そっか……あのね、今日は本当に嬉しかった。百瀬くんもだけど、神楽が色々考えてくれたんだって。でもね、それと同時に……そういうの、後何年くらいなのかなって考えちゃった」
「どういう事?」
「だって、いずれ神楽にも好きな子が出来るでしょ? そうしたら、ホワイトデーはその子の為に一生懸命になると思うから、今日みたいなのは後どのくらいなのかなって……思って」
「亜夢、まだ気が早いよ。神楽はまだ当分、亜夢が好きだと思うよ? 今日だって常に『ママがママが』って感じだったんだから」
「そう、なの?」
「うん。神楽はしっかりしてるけど、やっぱりまだまだ子供だよ。大丈夫、俺らの元から離れるのはまだまだ先だと思うから」
「……そっか」
百瀬くんのその言葉で、胸の痞えが取れた気がした。
「さてと、俺らもそろそろ寝よっか」
「うん、そうだね」
「おやすみ、亜夢」
「おやすみ、百瀬くん」
神楽を抱き締めるように横になった私たちはしっかりと手を繋いで眠りに就いていく。
この日は愛おしい二人と共に眠れたからなのか夢見が良くて、朝目が覚めた時はいつも以上に凄く幸せな気分になれたのだった。
ーENDー