《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「神楽、良かったね」
「うん! ワンちゃんおむかえしたの、パパだったんだね! オレ、すげーうれしい! パパありがとう! オレ、おせわがんばる! ママがたいへんにならないよう、がんばるね!」
「神楽……」

 犬を迎える事になり、なおも私に負担が掛からないよう気にして自分がお世話を頑張ると張り切っていると、それを聞いた百瀬くんが、

「神楽、子犬はもう家族の一員になったんだから、みんなでお世話するんだよ? 誰か一人が頑張る必要なんて無いんだ。パパもママも神楽もみんなで協力してお世話すればいいんだよ? 分かった?」

 神楽だけじゃなくて、家族みんなでお世話をしようと言い聞かせてくれた。

「でも、ママはおなかに赤ちゃんいるからたいへんだし……」
「神楽、ママが調子の悪い日は、神楽が頑張ればいいんだよ。ね、ママ?」
「うん。そうだよ神楽。ママもワンちゃんのお世話したいから、一緒にしよう? それで、調子が悪い時は神楽にお願いするから。ね?」

 心配してくれる神楽に私と百瀬くんがきちんと話をすると、それを聞いた神楽は、

「わかった! みんなでおせわする! それで、ママがむりなときはいつでもいってね! オレ、がんばっておせわするから!」

 ようやく納得してくれたみたいで、一人で頑張らずみんなでお世話をしていく事を了承してくれた。

「神楽、ワンちゃんのお名前、どうしようか? こう呼びたいっていうの、ある?」
「あのね、ワンちゃん、えほんにでてくるココにそっくりだから、ココがいい!」
「ココちゃん、良い名前だな」
「うん、本当に。ワンちゃんは男の子だから、ココちゃんは神楽の弟だね」
「オレのおとうと! ココ、よろしくね!」
「ワン!!」

 子犬は『ココ』という名前に決まり、家族の一員になった。

 神楽が「よろしく」と言うとココが「ワン」と返事をしたので、私も百瀬くんもココは賢い子だねと言いながら微笑み、神楽とココが楽しそうに戯れる姿を眺めていた。

 神楽の気持ちを聞く為に悲しませてしまって心苦しかった私は、喜ぶ神楽を眺めながら涙を流すと、

「亜夢、ごめんね。俺の作戦で嫌な役回りさせちゃって」

 百瀬くんが肩を抱きながら謝ってくる。

「ううん、百瀬くんのせいじゃないよ。大丈夫。それに神楽の悲しむ姿を見るのは辛かったけど、きちんと本音を聞くことが出来たし、今回はこれで良かったんだと思うから」
「そっか。これからは賑やかになるね」
「うん。毎日がもっと楽しくなるね」
「だな」

 笑顔の神楽を眺めつつ、「悲しませてごめんね、本音を聞く為だったとはいえ、嘘を吐いてごめんね。でも、今日はエイプリルフールだから……許してね」と心の中で謝りながら、百瀬くんと共に幸せな時間を噛み締めていた。



―END―
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