君と奏でる世界は、虹色に輝いている。

「社長との食事も、遠坂さんを私のマンションの部屋まで入るようにしたのも、全部最初から仕組んでたの」

琴吹さんは衝撃的なことを口にした。

「じゃあ、お酒に酔ってたのも…?」

「わざと、酔ったフリしたんですよ」

つまり、あれは全部演技だったのか。

「どうしてそこまで手の込んだことを……」

しかも、社長まで使って。

なんでそこまでする必要がある?

「私は今の立場を守り続けなくちゃ生きていけないの……」

そう言って、琴吹さんはゆっくり話し始めた。

両親が人気アーティストであるがゆえの葛藤と苦悩。

ただ純粋に歌うことを楽しんでいる結音に対する憧れと嫉妬。

結音は歌うために生きているけれど、琴吹さんは生きるために歌っているんだ。

同じ世界にいながら、ふたりは正反対の生き方をしている。

人気歌姫の本当の姿は―

自分の居場所を探し、本当の自分を見てほしいとを切に願うひとりの女の子だった。
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