クールな御曹司の溺愛は初恋妻限定~愛が溢れたのは君のせい~
「……そんな。お元気そうだったのに。助かりますよね?」
 彼のおじいさまは、仕事ではとても厳しい方らしいけど、私にはすごく優しくて実の祖父のように思っている。
「わからない……」
 ポツリと呟く有栖川さんがつらそうに見えて、たまらず彼の手をギュッと握った。
「絶対に助かりますよ」
 有栖川さんを元気づけると、彼が小さく頷く。
「ああ」
 病院に着くまで、それ以上のことはなにも言えなかった。
 都内でも有名な大学病院の前に車が停車すると、彼が私の手を掴んで車を降りる。
 そのまま病院に入り、エレベーターに乗って、ICUへ――。
 危篤状態の会長に会うのが怖かった。
 表情にも出ていたのか、有栖川さんが病室の前で、私に目を向ける。
「大丈夫か? どこかカフェで待っていてもいい……」
「いえ、大丈夫です」
 彼の言葉を遮って、しっかりと伝えた。
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