クールな御曹司の溺愛は初恋妻限定~愛が溢れたのは君のせい~
 ハハッと乾いた笑いが込み上げてくる。
 正直、こんな形で有栖川さんと結婚したくなかったな。
 特に荷解きはせず、スーツケースを閉じたら、有栖川さんが部屋に入ってきた。
「神崎さん、こんなことになってすまない。祖父の命は絶対だ。俺がアメリカにいればこの婚約もなかったことになると思ったけど、目論見が外れたな」
 やはり、彼は私と結婚はしたくなかったんだ。
 わかっていたこととはいえ、ズキッと胸が痛む。
 動揺を隠して黙っていると、彼は続けた。
「一度祖父に神崎さんを縛るなと意見したんだが、聞く耳を持たなくてね」
 知らなかった。私との婚約、解消しようとしていたなんて……。
 おじいさまが破談にしなかったのは、私を思ってのことだろう。大人になってから何度か『蒼のことは好きか?』と聞かれて、『はい』と答えたことがある。私が『いいえ』と返していれば、こんなことにはならなかったはず。縛っているのは私の方だ。
「悪いけど、俺と結婚してほしい。一年経ったら性格の不一致とか、適当に理由をつけて離婚しよう。それで祖父も納得すると思うから」
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