クールな御曹司の溺愛は初恋妻限定～愛が溢れたのは君のせい～

　なんせこの結婚は彼のおじいさまが一方的に決めたもの。正式に結納を交わしたわけでもない。口約束だけ。だから、うちの親もいまだに半信半疑なのだ。
　有栖川さんは毎年クリスマスに【メリークリスマス。素敵な時間を過ごしてください】と写真付きのメッセージをくれるが、それは婚約者としての義理のようなもので、そこに甘い言葉は一切ない。
　ちなみに去年はなにかのパーティーに出ている様子を写した写真で、数人に囲まれシャンパンを飲んでいる彼はカメラ目線ではなかった。恐らく、彼のアシスタントが用意した写真なのだろう。
　大学まで有栖川さんは特定の彼女を作らなかったようだけど、アメリカで素敵な出会いがあって、今はお付き合いしている女性がいるかもしれない。それでいいと思う。私には彼を陰で応援するのが性に合っている。だって、私は彼の見守り隊だもの。
　本当に有栖川さんの奥さんになれたらって思わなくはないが、元モデルの彼のお母さまのように華のない自分が、大企業のトップを支えられるわけがない。努力でどうかなるものではなく、持って生まれたものが違う。
　そんな私が有栖川さんと結婚しても、緊張でまともに話をすることもできず、円満な結婚生活など送れないだろう。だから有栖川さんが他の人と結婚したって、彼が幸せならそれで満足なのだ。