唇を隠して,それでも君に恋したい。

夜風ウタウ,ボクとキミの関係。


「敦はある? 僕と何か,その……したいこと。僕は,だから,君のことが好きだったけど。まさか振り向いてくれるなんて考えたこともなかったから。実を言うとどうしていいか分からない」



でも何か望んでくれるのであれば,僕はそれに出来る限り答えたいとも思う。



「デートしたい」



あまりにも余地なく返ってきた答えに,僕はびっくりと目を丸くした。

甘く広がる響き。

だけど,まともなプランも浮かばない。

もじもじと困っていると,敦は続けた。



「クレープ食べたり,こうやって2人で飯来たり。無難に水族館に行ってみたり。ただ,2人で過ごしてみたい」



付き合っているからこそできること。

いつもの皆がいない場所で,ただ2人でいること。



『へいお待ち』

「……うん」



僕は運ばれたラーメンのスープに口をつけて,ぽそりと肯定を示した。



「あと」



すっかり気を抜いていた僕は,ラーメンをツルツルと啜っていたけれど。

譲れないと言うように強く続いた言葉で,僕はむせた。



「抱きしめたい」

「なっ……何を」



そんな,真顔で言うことか?!?

そんな風に思われるのは嬉しい。

だけど,そんな。

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