唇を隠して,それでも君に恋したい。
全部このどうしよもない僕のため。

溢れる僕への好きの感情を止められなくて,だからこそ敦は僕のために涙を流したのだ。

何が自分の気持ちなのか分からない。

そんな本物と判断のつかない残酷を,初めて体験して,僕のために悲しんだ。

それで,充分だろう?

地球があと何回回ったら,なんて僕らの間にそんな長い猶予はない。

言いたいことは,今言わなくちゃ。

この観覧車が,あと半周したら。

それが僕らのサヨナラのとき。

じわりと何かが心に染み渡る。

不安定な足場で,僕は立ち上がった。

ありがとうと,そう敦の耳に囁いて,無かったことにするようにその頭を抱き締める。

……ドキドキするね。

今,僕の心音が君の耳に届いていることだろう。

だけどきっと,敦,君もだね。

それが"どっち"の意味なのか,あるいはどちらもなのか。

そんなことが,今だけはどうでもいいように思えた。

君は僕を,本当に好きでいてくれたのだろう。

そっと腕を外す。

敦はサヨナラの空気を徐々に感じ取り,不安と焦りで一杯の瞳を,僕に向けた。

嬉しい。

僕は初恋の敦の大切な人になれて,大切にされて,嬉しかったよ。

それが僕のわがままの結果で,君を不幸にするのだとしても。
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