唇を隠して,それでも君に恋したい。


「でも……あんしんしてよ。僕はヒメとは,本当は何もないんだ。一緒にいて,互いを1番にしているけど……ハグ以上はもう,しない約束なんだ」



僕は誰のものにもならない。

僕の人生まるごと,君で一杯にして捧げるから。

それで満足して安心して欲しい。

関係上,ヒメと付き合いはしても,僕には女の子の彼氏なんて似合わないとしても。

僕の最後の人は,君だ。

僕の精一杯の嘘偽りない微笑みに,敦は困惑を乗せ,その後二度と話しかけては来なかった。

さあ,すべての問題が片付いたところで……

三年過ごしたこの場所とも,お別れだ。

僕はこんなところで立ち止まるわけにはいかない。




「伊織!」



卒業式後のクラスメートとの挨拶もそこそこに,ヒメは僕のもとに駆け寄った。



「ヒメ!」


もちろん,僕も笑顔で答えてその小さな体を抱きとめる。



「卒業おめでとう! 良かったね,2人とも第一希望! 卒業しても,会ってくれる?」

「もちろん。連絡には絶対応えるし,電車で見かけても声をかける」



そう,僕らの受かった大学の志望先はそこそこ近い。

僕の進学は国に指定され,引っ越しも余儀なく決定しているような場所。

交渉の末学部だけは自分で決定したけれど,当然大学自体はこの場所からもかなり離れているため,合否が出た後ヒメの話を聞いてとても驚いた。

ヒメは母親が通っていたことや校風を気に入ったこと,そして居候させてくれるという叔父一家が住んでいることもあってそこに決めたらしい。

時間によっては電車で会うこともあるだろう。

今日をもって,恋人ではなくなるけど……

一人の友人として,これからも関わることになる。

あとは……


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