唇を隠して,それでも君に恋したい。



「僕はあのこと付き合うよ」


それだけで,やはり敦には伝わる。



「何を言ってるか分かってるのか」



感情を抑えて,敦は僕に問いかけた。

そんな言葉で,僕が揺らぐはずもないのに。



「もちろん。僕が彼女に何をしてるのかも」

「なら……どうして俺じゃだめだったんだ」



本当は分かってるくせにそんなことを言う。



「今くらい……顔くらい合わせてくれよ……っ。伊織……っ!!!!!」



唇を噛んで,揺らして,すっと顔をあげる。

完璧に覚悟が決まったわけじゃない。

足も震える。

でも僕の言葉は最初から決まってた。



「すきだからだよ。……僕は君のことが,敦のことがすきだ。だからだめなんだよ。僕は,僕は好きな人とは,エッチするならキスがしたい」



直接的な言葉から,本気度の伝わった敦が息をのむ。

唇に触れて答えると,敦は頬を染めて視線を僕から離した。



「デートの最中に,別れる前に,抱き合ったその時に。僕はキスしないなんて耐えられない。キスがしたいときっと必ず思うんだよ」



そんなの,悲しすぎるだろ。

僕はなぜ今敦が僕を繋ぎ止めようもしたのか分かっている。

僕は敦にそれを告げるか迷って,観念するように呟いた。

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