唇を隠して,それでも君に恋したい。
「僕を誰だと思ってるの? 研究費を全て負担して,君たちに給金も出して。そういうお偉いさんの息子のお金持ち坊っちゃんだよ? 全員まとめて僕のこにして,最近新しく建てた家でちゃんと育てるよ」
「どうしてそんなかってな……!」
「君にもプレゼントがあるんだ。僕と,年に一度君に宛てて贈り物をしていた人間から……今までお疲れ様」
話にならない。
年に一度,というのは,研究当初から応援の言葉とともに1つプレゼントをしてくる人のことだろう。
子どもたちの誰かの親か何かだと聞いているけど,その人のセンスはかなり僕好みで,去年頂いたディフューザーは子供達にも大人気。
結果僕自ら個人的に定期購入する品となっている。
しかし頭にきて冷静になれない僕は,あっちと指された方とは逆に歩いた。
手続きが終わっているなら子供たちを法的に奪い返すことなど出来ない。
ぐっと感情を押さえて,僕は最後に告げた。
「また今度話をしよう」
「はいはい」
数分後,僕は広い庭から帰路を目指していた。
「……あの,すみません」
「え?」
その後ろから声をかけられ,僕は素っ頓狂な声を上げる。
綺麗な女性だった。
黄色の着物を着て,サラリとした長い髪をまとめ,肩までの前髪を真ん中で分けている。
「突然ですが,伊織さんでお間違い無いでしょうか」
「は……えぇ」
「先程のスピーチ,素敵でした。まずは長年の研究が成果と実ったこと,心よりお喜び申し上げます」
ふわりと,それは蕾のように。
綻ばせる女性に,僕は目を剥いて頷いた。
きょろきょろと見渡して,女性は僕へ続ける。