唇を隠して,それでも君に恋したい。
「そう。なんだから。もっと喜べばいいのに」
僕はいつまでもこんな体裁だけのパーティーにいる暇はない。
世間に普及させるための最後の仕事も終わってはいないのに。
そんなことよりと僕は話題を打ち切った。
「いい。僕は他の子供たちを迎えにいくよ。手続きはしてくれたんだよね?」
僕の言葉に,困ったように微笑んだ和寧は沈黙を返した。
それを見て,目を見張る。
「まさか」
嫌な予感がする。
そしてその嫌な予感は少しもズレずに的中した。
「したよ……あの子達を皆,僕のこにする手続きをね」
どうして邪魔してくると分からなかったんだろう。
研究当初,被験体に判断能力の乏しい子供を使うことを最後まで反対していた僕と,僕へその残酷な希望を説得し続けた和寧。
彼は冷酷な人間でも血の通わない人間でもない。
僕と同じことなどきっと,最初からずっと考えていたんだろう。
子供たちは全て彼が見て,接して,説明して交渉して,数少ないS・Pとして世界中からつれてきた子供。
僕は"S·Pの能力を被毒者の体内から分解し,無効化する研究"の成果として莫大なお金を貰っていた。
それは子供たち全員を十分に養い続けていけるだけのものだ。
身体影響について細心の注意を払っても,散々子供たちを利用するのだから,僕はそのお金と僕の持つ最大の真心を持って子供たちを幸せにする責任があると考えていた。
その結果辿り着いた結論が,全員残らず施設から引き取ること。
施設の子供,から,僕の家族にする。
僕には,子供たちと関わってきて,この先も子供たちを愛して幸せにする自信があった。
だけど彼はそもそも,最初から僕にそんなことをさせるつもりがなかったんだ。
この12年間,ずっと黙って……たった一人で。