唇を隠して,それでも君に恋したい。


僕は余計なことを言わないように,そして僕の幸せを伝えられるように。

そっと感謝を伝えた。



『急に変なこと言わんとって。そんなん決まっとるや……う,わ!! まの……』

『和寧! やっと見つけた!!! 約束!!!! 果たしてよね。何のために何年も待ったと思っとーと?!? 月に数回Barでデートするため? 違うやろ! いい加減私と結婚してっちゃ!!!!』



突然キンキンと騒がしい。

あぁと状況を理解して,僕は電源を落とした。

やはり,彼女に居場所を伝えたのは正しかったみたいだ。

にやりと笑い,スマホをポケットにしまう。

それよりも今は,と。

ようやく,僕は落ち着いた心で敦を見た。 

僕はまだ,幸せになれるのか。

この人を愛して,幸せになってもいいのか。

不安は尽きたわけではないけれど,その僕を見つめる優しい瞳を見て……

この人と生きていきたいと,小さな炎が燻るように温かい気持ちで思った。


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