唇を隠して,それでも君に恋したい。
僕はオトコノコ。

僕は"フツウ"にアコガレテイタ。


「伊織ーお前今日もまだ着替えねぇ~の? それでこの前も遅刻しそうになってたろ」

「ああ,僕は。後でも充分まだ間に合うよ」



クラスメートがわさわさと上裸になっていく中で,静かに机へ腰をつける。

朝が冷えてきたこの10月に,1限目は体育だった。

正直,この時間は僕にとってあらゆる意味で居たたまれない。

僕に声をかけてきた鈴村 亮介(りょうすけ)は面倒見が良く,頼られがちなリーダータイプのいい友達(やつ)だけど。

何度答えても定期的に聞いてしまうおせっかいは玉に瑕。

と言うかさっさと服を着ろ。

そんな僕らの会話を聞いて,自然とこちらを見る男が2人。

ボサボサの頭をかき混ぜる稲垣(いながき) 竜之介と雑に着替えを済ませる峰 三太(さんた)が交互に口を開いた。



「スズ。教師もなんも言わねーんだからほっとけよ」

「それな。伊織のその,女よりきれーな顔の下にはデッケー刺青が彫ってあんだよ」



な! と三太に肩を組まれ,僕ははぁと眉間を押さえる。



「三太うるさい。適当なこと言うな」



見てと僕が指を指した先にいるのは,驚いた顔をしている敦。
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