唇を隠して,それでも君に恋したい。
「うん。ありがとうスズ」
三太がごきゅごきゅと水分を補給する。
視線を感じて顔を上げると,三太は僕のお弁当を見ていた。
三太はもう,早くも自分の分を食べ終えている。
嫌な予感がして,あげないよと言いかけた。
けれどそれよりも早く,三太が口を開く。
「なー。全然食ってねーじゃん。いらないなら唐揚げだけでもくれね??」
明らかに僕に向けられた言葉だ。
僕はお弁当を守るように腕で囲った。
「だめ。絶対やだ」
「何でだよ,ケチだなー。今度なんか返すから」
「だめ」
僕はマスクの下から食べ物をいれていく。
三太はムッとしたように口をつぐんで,箸を噛んだ。
これ以上明確な拒否を示さないといけないのかと窺いながら,平静を装って僕は食事を続けた。
「三太」
見かねたような声色で,リューが短く三太を見る。
僕がそちらを見ると,三太の空になったはずの弁当箱の上に唐揚げが乗っていた。