唇を隠して,それでも君に恋したい。



「何してんの? 敦」

「え,あーー。俺は」



ちらりと,敦がとっさに隠そうとした物が見えた。

今どき古風な……

きっと真面目な子なんだろう。



「なんだ,告白か」

「まぁ,そんなとこ」
 
「伊織は?」

「んー? ううん。もう出るよ。敦がまだってことは,皆も教室にいるんだろ? 僕も帰るよ,一緒に戻ろう」



実際,僕の心は揺れていた。

どんな子が,何て言って敦に想いを伝えたんだろう。

あの手紙には,なんて書いてあるんだろう。

敦はなんて答えたんだろう。

だけどそれはどれも僕に関係がないから。

ここに残る敦が答えだと信じて。

出来れば,相手の子の想いが報われないといいなんて。

せめて学校外で恋愛してほしいと思うなんて。

そんな僕をどうか許してほしい。

心に秘めているくらいは……


「待ってて,すぐ行くから」

「ああ。玄関で待ってる」
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