唇を隠して,それでも君に恋したい。
僕がまのんに告白したのはそれから更に2年がたった時だった。
形容できないくらい,毎日がとにかく幸せだった。
大事に想って,毎朝手を繋いでは大事にしようと思っていた。
彼女と一緒にいるだけで幸せだった僕は……
囲われて,ひっそりと甘やかされて育った僕は。
それがどんなに残酷な結末を呼ぶかなんて考えてもいなかった。
僕は,まのんとの関係を誰にも打ち明けなかった。
僕は,僕のからだのことを,まのんに打ち明けた。
だから僕はきっと,何もかも分かっていたんだ。
本当は最初から。
だから正しい人に止められないように,神経を張り巡らせて僕らのことを隠した。
僕はまのんのことが好きだった。
ずっとずっと好きだった。
だけどまのんのためにその気持ちを抑えられるほど,僕は大人になれなかった。
だから……僕は彼女を,描ける最低の形で傷つけて。
今もきっと,彼女の心に深い爪痕を残し続けている。
突然の別れ,突然の絶縁,おまけに逃げるようにしてした最後の転校。
僕にはその心を癒すことも,傷跡を塞いであげることも出来ない。
それなのに,僕は僕が救われるためだけに,彼女を1人置き去りに,1人で君に会いに来た。
僕は小心者で卑怯な男。
僕は……無力だ。
だからかな。
君を偶然初めてみた瞬間,僕は運命を感じて嬉しかった。
明らかに君に好意を寄せている男,龍之介を見て,少し嫉妬をした。
だからつい,わざわざ君にぶつかるような悪戯してしまったんだ。
ごめんね。
僕はただ,君の視界に映りたかった。
君とは長い付き合いになりそうだと,僕は君と近付けた今も思う。