唇を隠して,それでも君に恋したい。
閑話。
甘く,沈む。
僕はずっと,君に逢いたかった。
いつまでも心待ちにして,何度も父親に掛け合って。
やっと見つけた。
だから直ぐに飛んできて,実際に君を見つけて,舞い上がったんや。
それはもう,不審がられて嫌がられるくらい。
僕には直ぐに分かった。
同い年のS·P,羽村 伊織が,君のことだって。
僕は君に逢いたかった。
その渇望は,きっと君も同じだって僕は君を見て直ぐに理解した。
だからここから先は少しだけ,君に僕の身の上話でもしようと思う。
とはいっても殆どは良くあるような恋ばなになるのかな。
君の想いを暴いたお詫びに,僕からも少しだけ。
まずは,うん……自己紹介から。
僕の名前は黒田 和寧,とある政治家の一人息子。
不自由なS·Pとして生まれた,金持ちで世界一自由なS·P。
それが,僕。
初恋はちょっと早くて,保育園の時。
始めて幼馴染みと手を繋いだ時のときめきは,感触と共に今も脳裏に焼き付いている。
幸村 まのん,大手メーカー社長の大事な大事な可愛い一人娘。
長い黒髪がさらさらと靡く,純粋で可愛い女の子。
それが僕の長い長い片想いの相手。
いつまでも大切な僕の一番,宝物みたいな女の子。
その子との両想いを自覚したのは,同じS·Pに会えるかもと母親の転勤についてした2度の転校から戻ってきた小学校6年生の時。