唇を隠して,それでも君に恋したい。

「そうやな。国内なら大体行ってると思うで。転校も数回してるし,うちの親も旅行好きやしな。うちの家,金ばっかりは豊かやから」



つくづく正反対の環境で育ったらしい。

僕はほんの少し声量をあげて,ずいずいと尋ねる。



「ふぅん。ねぇ,沖縄って海,綺麗? 僕,汚いところしか知らないんだけど,ほんとにあんなテレビみたいに綺麗なの?」



実は



「……意外やな。伊織は行事事になんて興味ないのかと思ってた」

「……るさいな。いいだろ別に」

「はいはい。悪いなんて言っとらんやろ。一緒に風呂入ろーな」

「誰が。僕は備え付けで入るからいい」



僕は,今回の修学旅行,結構はちゃめちゃに楽しみだったりする。

敦も皆も一緒で,行き先はテレビ越しにしか見たことのない沖縄で。

楽しみじゃないわけがないのだ。



「はいじゃー説明はここまで。さっきも言った通り男女割合も含めてうちのクラスは自由だから,さくっと決めてくれな~」



わっと沸き立つクラス内,動き出すクラスメートにつられて僕も立ち上がった。

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