唇を隠して,それでも君に恋したい。

「和寧!」



けれど多分気のせいだと,僕はぱたぱた走る。

リューはまだ和寧とそんなに仲がいいわけじゃないと思うから。

敦はリューに譲ろうと思った。

偉い,僕,えらい。

自分でいうのもなんだけど,少し前までは,そんな協調性は持ち得なかった。

僕に気づいた和寧がおーと片手をあげる。

その気安い笑顔に,僕はほっとした。

バスに乗り込むと,思った通りペアになったらしい敦とリューが僕たちの前の席に座る。

敦は振り返ったかと思うと,じっと僕の目を見た。



「な,なに? 敦」

「いや,さっき。いや,この間……」



さっき? この間?

どっち……



「お前らに聞きたいことが……」



お前……"ら"?

敦が視線を向けた先にいるのは,和寧。

僕がきょとんとしたまま和寧に目を向けると,そいつはにこりと笑った。

< 77 / 163 >

この作品をシェア

pagetop