唇を隠して,それでも君に恋したい。
ボクと男子のコイバナ。
「なーいっつも思ってたんだけど,あの子可愛くね?? 1組かな。誰か知ってる?」
三太が指したのは,いつもと変わらずポニーテールを揺らした,細身で素朴な同級生。
友達と笑い合う彼女を見て,僕はあぁと三太に答える。
「確か3組だよ。岩永 充さん。彼氏もいないはずだから,そんなに気になるなら声かけてみたら」
三太のそのテンションを理解してくれる人かどうかは知らないけど。
「伊織から女子の話が出るなんて珍しいな。俺はクラスメートすらまともに覚えてないと思ってた」
失礼な。
確かに隣のクラスにもなると殆んど分からないけど,クラスメートの顔と名前くらいは直ぐに言える。
岩永さんのことは,僕と同じでいつもマスクをしているから,僕も覚えていただけだ。