【完結】大人女子✕年下男子!あなたがだいすきです!可愛い年下わんこ君との恋人7日間契約
 慌てて利佳子が声を上げるが、時既に遅し。

「え? 課長の? カレシ??」

 当然、二人とも目を丸くしている。

「そうです。俺は……利佳子課長の恋人です! 昨日からお付き合いさせていただく事になりましたので、彼女は合コンに行くことはできません!! 申し訳ありませんがキャンセルをよろしくお願いいたします!!!」

 隆太朗が宣言するように大声で言った。
 振り返って見る人もいるが、隆太朗の目に迷いはない。

「は、は……はぁ」

 新人さんも圧倒されたようだ。
 飼い主を前に、良いことをした! とワフワフしているワンコのような隆太朗。
 逆に利佳子は冷や汗だ、

「あの二人とも、あのね……ちょっとこれには……」

「すっごーい! 課長ってばやりますね~! イケメン彼氏さんはぁ、ちなみに何歳!? 年下ですよね! 合コンできる友達とかいたらぁ~紹介してほしいでーす!」

 新人さんがキャピキャピ話を始める。
 これには一瞬、隆太朗も怯む。 

「こ、こら! やめなさい! 課長~じゃ、お疲れ様でした!! さ、お邪魔だから早く行くよ!」

「え~~っでもぉ」

 事務員さんが新人さんを引っ張って連れて行く。
『飲みに行くよ! 大体あんたは失礼過ぎる!』と聞こえてきたが、利佳子に向かってペコっと礼をしたあと、ぐっと親指でサムズアップのサインをした。

 利佳子は、手を振って頭を下げた。

「あぁ……気を遣ってもらっちゃった……ありがとうございます」

「あの……利佳子ちゃん」

「り、隆太朗君!!」

 キッと睨みをきかせてしまったが、きゅーんと泣きそうな顔をした隆太朗。
 利佳子が焦ったことが、わかったようだ。

「ご、ごめんなさい! でも俺、合コンには絶対に行ってほしくなくて……それで」

 きゅーんと耳が垂れ下がる様子で、謝る隆太朗。
 その姿を見ると、利佳子の心もキュンとする。

「ごめんなさい……利佳子ちゃん……同僚の皆さんの前で色々と……」

 弟の友達として数年の付き合いがある。
 なので常識のある子だとは、わかっていた。
 はぁっと息を吐く。

「合コン断れて良かった。結局言えずだったから」

「利佳子ちゃん……許してくれる?」

「別に、怒っていないわ……行きましょ、また会社の人が来るかもしれないわ」

「は、はい……! 行きましょう!」

 ぎゅっと、手を握られる。

「!」

「合コン断れてよかったぁ~」

「……そう、そうね」

「夕飯も喜んでくれると嬉しいです! 部屋の掃除、昨日から頑張っちゃった」

 ドキドキドキドキ。
 手を繋ぐだけで、こんなに緊張するなんて。
 
「俺の手、手荒れには気をつけてるんだけど……やっぱガサガサで痛いかな?」
 
 パティシエの隆太朗の手。
 大きくてあったかい。
 確かに手荒れしているのもわかったが、気にはならない。

「ううん、そんな事ないわ……大丈夫。私のほうが乾燥してシワシワよ、なんだか恥ずかしいわ」

「あったかくて、素敵な手だよ。指が長くて綺麗だなって思ってた」

「!」

 ドキーン!!
 この人は公衆の面前でなんて事を!! と思ったが、そんな破廉恥な事ではない。
 ニコニコ顔の隆太朗に手を繋がれたままで、利佳子は顔が熱くなるのを感じたまま歩く。
< 10 / 39 >

この作品をシェア

pagetop