❤️俺にお前の心をくれ~若頭はこの純愛を諦められない
車から出てきたのは、健吾の側近、渡辺龍だった。

「自分たちにまで心遣い頂きありがとうございます、若頭がいつもご迷惑を掛けてすみません」
「いいえ、迷惑だなんて、私のような女に優しく接して頂いて、西園寺さんにはなんてお礼を言ったらいいかわかりません」

「五年前の御恩に比べたら、若頭はその時から夕凪様に一途なんです」

(えっ、五年前?)

由梨は全く覚えていない。

健吾に初対面ではないと言われたが、何があったのか記憶になかったのだ。

「あのう、五年前何があったのでしょう」

「夕凪様の記憶にはないことでしょうか」

「すみません」

「夕凪様は若頭にとって命の恩人です」

(命の恩人?この私が西園寺さんを助けたの?)

「私が西園寺さんを助けたなんてありえません」

「詳しいことは私の口からは申し上げられません、若頭にお聞きになってください」

私は部屋に戻った。

健吾は欠食児童のように、食事を口に運んでいた。

「うまい、由梨の食事はすごくうまいよ」

「ありがとうございます、外に待機している組員さんにもおにぎりの差し入れしました」

「悪いな、あいつらにも」

「あのう、私は西園寺さんと初対面ではないと言ってましたけど、五年前に何があったのでしょう」

「由梨が俺の命を救ってくれたんだ」

由梨はキョトンとした表情を見せた。
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