監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


「藤枝。先ほどの件、了承した。だが、気が変わったらいつでもはなせ」


「は、いえ、気が変わることはないかと」




 思わずそう答えてしまうと、財前先輩はぱちりとまばたきして、ふっと目を伏せながら笑った。




「それは残念だ」




 そう言って、財前先輩は廊下に姿を消す。

 ぼーっとしていると、「景依(けい)ちゃん…」と兎杏の声がした。




「あの、ごめんね、聞こえちゃったんだけど…“好きなひと”って、もしかして…」




 兎杏はおずおずと私を見る。

 これ、もしかしなくてもバレちゃったよね…。

 私と雷牙の関係、知ってるし。




「…うん。好きに、なっちゃった」


「…そっか」




 兎杏は視線を落として考えこむと、扉を閉めて私のもとへ来た。

 そして、ぎゅーっと抱きついてくる。
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